ストーンカメオの歴史をひも解く際、まずぜひ見ていただきたいのが世界三大カメオです。
これらは、ヨーロッパの博物館に大切に保管されています。これらは、彫刻されてから2000年以上経った今もその美しさを保っているのです。
古代ギリシャローマ時代、アレキサンダー大帝の望みで、大帝に仕える最高の彫刻師Pyrgoteles(紀元前2~1世紀)により彫刻されたカメオが、タツァ・ファルネーゼです。その名は当時の指導者たちによって名づけられたもので、“華麗なる芸術品”を意味しています。
この図は、豊かなるナイルの大自然を物語り、左側の隅に横たわっている人物は、ナイルの誇り高き魂を表し、中央には手に鍬を持ったTriptoiemos Horosが立ち、Sphinxの背後には華麗なる神の子Euteniaが腰をかけています。
このカメオは、約25センチメートルほどの大きさの黒白色めのうに彫られており、二段のモチーフ上段中央の王座に座っているのが女神ローマ、右側にはアウグス皇帝が座っています。左側のGermanicus, Tiberius, Victoriaの3人が戦いで勝利をおさめ。これによりローマへ帰還するとの報告をしています。
このカメオは、パルドゥイーン2世がルードヴィッヒ9世に寄贈したもので、パリの聖シャペル教会の宝物殿より発見され、1341年にはじめて世に紹介されました。
それぞれ異なった3つの世界を意味する三段のモチーフを持ち、中段の中央には皇帝Tiberiusを中心に、豪華な椅子によりかかる女王Liviaの姿など華やかな貴族の社会を彫りこんでいます。下段にはGermanicusに敗れた捕虜たちの姿が彫刻されており、当時の皇帝の権力を物語る興味深いモチーフです。
シュミット氏は、世界三大カメオのレプリカを作成したいと考え、できるだけ実物に近いサイズ、色のルースを探していました。
また同時に、三大カメオの歴史を調べるために、パリ、ウィーン、ナポリの大学や博物館等に足を運び研究を重ねました。その際に知り合った教授達に、シュミット氏の三大カメオ再現企画に非常に興味を持たれたことにより、大学の博物館に展示したいとの申し入れがありました。
2006年に三大カメオが完成すると、アウグスブルグ・マキシミリアン博物館、ボン大学芸術美術博物館に展示されました。
その後、ベルリン古代博物館からも展示依頼があり2007年に展示し、2008年にはウィーン歴史芸術博物館に展示しました。
オリジナル作品に相当する大きさの石を見つけることが、最も難しい問題でした。フランスの大カメオとタッツァ・ファルネーゼは、5層の石で、こんな石は、これから先の生涯でも、見つけることは、できないでしょう。古代においては、相当高額なものでした。
それらに適した石は、イーダー・オーバーシュタイン市の原石業者のところにも、ブラジルの業者のところにもありませんでした。私個人が40年の間に集め残しておいた原石を使わざるをえなかったのです。
また、これほどに大きい石の制作作業は、大変困難です。裁断や色付け、焼きなどの過程で、石が割れ裂けるというリスクが、とても大きいのです。特に、フランスの大カメオとタッツァ・ファルネーゼの数回に及ぶ着色と焼入れの手間、それに伴う危険性には苦心しました。
ゲルハルド・シュミット談
構想から仕上がるまで、1年半以上かかりました。この1年半の期間とは別に、三大カメオ製作にあたり、歴史や考古学などの専門知識を研究しました。
ゲルハルド・シュミット談
2007年、ベルリン古代博物館においてカメオ特別展が開催されました。2007年7月30日に行われた開催式、プレス発表ともにたいへん盛会で、100人以上の取材陣、400人以上の招待客が出席しました。開催式は、ベルリン国立博物館総館長、古代博物館館長による祝辞から始まり、最も有名な三大カメオの復刻作品が展示されること、その制作における功績を称える大変嬉しいご挨拶がありました。
また、副館長であるDr.ゲアトゥルート・プラッツ氏がシュミット氏、シュミット氏の作品について次のように話されました。
イーダー・オーバーシュタインの数々のカメオ彫刻家の中で、その何人かが、古代様式の彫刻を試みたのですが、ゲルハルド・シュミットは、本当の意味で、最高級に到達したと思います。彼は、古代の絵画様式を理解しました。古代の肖像研究にとても深く取り組み、たとえば、フランスの大カメオのような複雑な絵の構成をも、正確に理解したのです。それは簡単なことではありません。
イーダー・オーバーシュタインの博物館で色々な復刻作品をご覧になれば、なぜ私が、ゲルハルド・シュミットの作品をこれほどまでに高く評価するのかが、お分かりになることでしょう。
プレス発表の詳細は、Gerhard Schmidt氏 公式HP(一部日本語)でご覧になれます。