1980年代以降、数多くの彫刻家を輩出したリチャード・H・ハーン氏(1917年~1999年)。そのハーン氏に師事した弟子の一人がエルヴィン・パウリー氏です。彼は、柔らかく流れるような現代風のモチーフで新しいカメオ作りに挑戦し、「パウリー・スタイル」と呼ばれるスタイリッシュなカメオを数々生み出してきました。
「パウリー・スタイル」とは、カメオの中に様々な要素をプラスして詰め込んでいくのではなく、取り入れる要素を消去法で限りなくマイナスしていき、カメオをシンプルにするという考え方です。彼は、大半がオーソドックスなモチーフであった1980年代当時、いち早くパウリー・スタイルを考案し、芸術家としての独自のスタイルを確立していきました。
世代を超え引き継がれてきた技術と精神を持ち、そして80歳を超えた今もなお作品作りに励んでいる彼の姿は、言葉では言い表すことのできない信念と力強さを持っています。
彼が重鎮と言われる理由の一つに、作り手として最前線で活動する一方で、業界の発展に尽力してきたという一面があります。
彼は、マイスター試験の試験官として、ドイツ宝石博物館の理事として、また地元組合の代表として、後進の育成や業界の発展に長年にわたり貢献してきました。
1934年 | 2月生まれ |
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1949年 | 15歳から宝石彫刻を学び始める |
1952年 | リチャード・ハーン工房に入門 |
1957年 | マイスター資格を取得 |
1958年 | 自らの工房を設立 |
この間、様々な作品を制作し、美術館や博物館での展示なども行われる。また、20以上の賞を受賞。 | |
1979年 | ドイツ州政府が認める「クンストラー(芸術家)」としてカメオ彫刻を開始 |
1999年 | 国家十字勲章を受賞 |
2016年 | オランダ国立博物館にて、約1年間彼の作品が特別出展される |